サンジが上着を脱ぐと同時に足元に高い音が一つ響いた。 何かと思いウッドデッキへ視線を落とせば赤い一粒、涙のような形の石が落ちていた。 上着を近場の椅子にかけそれを拾うと、コイン程の大きさの石は月の光りを照り返しながら宝石のように輝く。

これは先程、ナミから貰った。 海岸に落ちていたこれを見つけた彼女は本物の宝石かと思ったようだ。 精巧に研磨され独特の形をしていたが、良く見てみればただの石。 がっかりとしていた所、通りかかったサンジがその石の美しさを褒め欲しいのならどうぞと差し出した。

サンジは上着をかけた椅子に深く座るとその石を窓の更に向こう、深い星空へ浮かべるように掲げる。 涙の形をした淡く赤い透明度のある石。まるで彼女のようだ―、サンジはそう思った。

純真無垢で、誰にでも情熱的で、いつも正しい道を選び、真実に打たれ一人心で泣く彼女。

サンジは持っていた石を力強く握り締める。 まるで彼女の手を掴むように、その手が離れていかないように。 戦うなら命尽きるまで、夢見るなら終わりまで、涙するなら枯れ果てるまで、そして、幸福に微笑むなら、共に。

そう、彼女が笑えるなら自分がいつも傍で、何だってしてやる。



サンジは開いた手の上に乗る石を見る。
そして相変わらず美しく月の光を反射するそれに、ゆっくりと口づけた。



ああこれを、あの娘にあげたらどんな顔をしてくれるかなんて、そんなの僕はもう分かりきっているんだ。








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(ぼくのたったひとつの、せいぎ) 2011/04/19

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